先日、日ハムが優勝して引退する新庄ばかり取り上げられてましたが、自分は小笠原が好きです。
言葉少なげにただヒットを量産する野球の職人です。淡々と目前の仕事だけをこなす姿に憧れます。 WBCで日本が優勝したとき、彼のコメントは「一番になったことは今まで無かったので嬉しいです」 という、個人で成績を上げながらもチームの優勝を味わったことのない陰の立役者的存在を象徴してます。 人類学でも同じなのですが、「人類学とは何か?」という大きな問題を自分の書く民族誌と何も 関連させずに書いている学者よりも、専門的な狭い分野でただ黙々と民族誌を書いている学者の ほうが尊敬できます。これは何も実証主義的、もしくは経験主義的にフィールドワークをすることを 闇雲に肯定しているのではなく、自らの専門領域は何かとわきまえた上で淡々とその領域内で、 一目につかない貢献を挙げる姿勢の方が素晴らしいと思います。しょせん人類学という体制内で 「人類学とは何か?」というような持論を説いても、たいして生産性があるとは思いません。そのような 仕事は科学史や文学などの専門家に任せ、体制外から批評を下してもらうほうが生産的だと思います。 話は急に飛びますが、昨日、ある学会で自ら妊娠したアメリカ人の女性が日本における出産の儀礼と 清浄化について研究していることを発表しておりました。妊娠したからこのトピックを選んだのか、 それともこのトピックのために戦略的に日本に来る前に妊娠しようとしたのか、とても気になるところ でしたが、自らの身体的経験を研究に利用する姿勢には驚きました。言葉通り体を張っているわけ ですが、個人的にはこういう人類学者が好きです。身重で苦しそうに発表する姿には心打たれました。
by fumiwakamatsu
| 2006-10-30 01:46
| 文化人類学
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