じつは今とても気になっている人がいる。
素敵な女性と言いたいところだが、そうじゃない。 何故か最近どの講演会に行っても鉢合わせてしまう日本人の老師がいる。 その老師は、おそらく読書をし過ぎたせいで目が腫れ、綺麗な白髪は耳を隠すほど長く垂れている。 まさしく「批評家」という言葉がぴたりと当てはまる風格のおっさんだ。 「憂鬱的思考のススメ」なんて題で「文學界」や「思想」などの雑誌に寄稿してそうだ。 なんと言うか、その風格がいかにも日本的なので逆に新鮮だった。 先週、デリダの追悼講演に行ったときもその老師はいた。 講演後のレセプションにも来ていたんだが、ただ1人ワインを片手にチーズを齧っていた。 あまりにも風格だけがあるので誰も話しかけようとしない。そして、「ワシからは絶対話しかけん」というオーラを発していた。 「でも内心は寂しいんだろうな。丸山昌男のネタとかふると喜んで話すんだろうな。俺から話かけてみるか」 と、思っていた矢先、一緒に来ていたルームメイトが帰ると言い出したので実現せずに終わった。 今日はイラクへの自衛隊派遣の講演を聞きに行ったんだが、そこでも老師がやってきた。 遅刻して来たのにゆっくり闊歩して教室を横断し、椅子にどっすり座ると腕を組んで難しそうな顔していた。 ハーバードの教授でも遅れたときは申し訳なく入ってくるのだが、老師には有無を言わせない威厳があった。 講演途中で老師の方を見ると目をつむってうなずいていた。 哲学的に熟考しているのか、ただ英語がわからないから眠ってしまったのか? 気になって仕方なかった。 日本人の知的風格って自分を高みに置いて「馬鹿は話しかけるな」というようなオーラを作ることで成り立っている気がする。 でもそれが、人前で活発にコメントをすることによって知的さが計られるこの国の風土に全く合わない。 とにかく、その老師を見ていて、「ただ風格だけを身につけると逆に損するなぁ」と考えていた。
by fumiwakamatsu
| 2004-12-15 14:24
| 雑記
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