なぜ赤ちゃんはかわいいのか

なぜ赤ちゃんは可愛いく見えるのか?

この問いは単純に「それは赤ちゃんだから」と答えてしまうし、誰も赤ちゃんが可愛いいことに対して疑問を挟まない。しかし、よくよく考えると不思議ではある。なぜ大人と比べて、赤ちゃんはずばぬけて可愛く見えてしまうのか。なぜ、よしよししたり、抱きたくなったり、肌をすり寄せたりしたくなるのか、と。たとえ肉親であっても、大人に対してそんな行動は一切とらないはずである。

しかし、この問いに進化論の視点から直接答えようとした学者がいた。もうすでに亡くなってしまったが、うちの大学で教鞭をとっていた故ステファン・グールドという化石学者である。彼は「ミッキー・マウスに生物学的敬意を払って」という論文の中で、このように述べている。

「可愛い」という感情が起こるのは、何の理由もなく起こるのではなく生物学的な理由が背後にある。それは、「可愛いさ」を引き起こすものに対して、常に周りが注意を惹き、手の届く範囲に寄り添い、危険物から守る介護の役目を果たさせるために、そのような感情が起こるように仕組まれている。グールド曰く、これは哺乳類にとっては非常に重要となる感情である。というのも、他の動物と比べ、哺乳類の赤ん坊は未発達な発育状態で生まれてくるため、産後も母親の庇護と授乳が必要となる。従って、母親の注意と介護を呼び寄せるために、哺乳類の子供は「可愛さ」を引き起こす容姿に進化していった。

ここまでの話だと、一般的に言われている「母性」について小難しく語っただけに過ぎない。しかし、グールドはダーウィンの論文を引用しながら、「可愛さ」を引き起こす容姿には一般的な法則があるという。以下の論文に挿入されている絵を見て欲しい。



この挿絵の人間や他の動物に共通しているのは、

1)顔全体の割合に対する目の面積の大きさ
2)おでこの出っ張り具合
3)横から顔を見たときの、鼻から頭部までの幅
4)顎の引き具合

が、子供から大人になるつれて変わってくる。つまり、子供に共通している特徴(目が大きく、おでこが出て、顔の横幅が小さく、顎が出ている)が、引き金となり、それを見るものに対して「可愛い」という感情を起こしている。上に述べたとおり、哺乳類の赤ちゃんは特殊な状態で生まれてくるため、そのような引き金に反応するよう、我々は進化の過程でプログラムされてきた、というのがダーウィンの言い分である。

さらにグールドが述べている点で面白いのは、論文のタイトルに入っている「ミッキーマウス」についてである。ミッキーマウスは、ディズニーが作り出した当初と現在とでは、劇的にキャラ設定と容姿が変化した。当初のミッキーマウスは、成人という設定で、人間や他の動物に対して常にイタズラを働く小悪魔的な存在だった。しかも、その容姿はというと、鼻が細長く、細目で、顎を引いていた。それが今やどうだろう。ミッキーは、魔法を操ったりするものの、”子供のように”純粋無垢な小さなヒーローという設定である。そして、同時に、目が大きくなり、鼻は引っ込み、顎が出て顔が平面になった。このような容姿の変化をディズニーが意図的に操作してきたのかは別にして、「可愛さ」という感情を引き起こすよう、その特徴を変えていったことに対しては、化石学者として「生物学的敬意を払う」に値する、とグールドは言うわけである。

自分は生物的・進化的決定論に関しては常に疑問を挟む人間だが、いざ、下の息子の写真を見ると、そんな疑問はふっとんでしまう。

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たとえまだ実物を見ていなくても、パソコンの画面に対してつい頬ずりをしたい欲求に駆られてしまう。なるほど、これほど「可愛さ」の感情は、進化によって深くプログラミングされているのか、と。そこには個人の自由意志などなく、つい体が動いていしまうものがある。おそるべし、進化の力。その威力はすさまじい。


というわけで、小難しく述べた子供自慢第1弾でした。今後も嫌ほど続きます。
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# by fumiwakamatsu | 2010-11-03 15:11 | 雑記