<   2009年 02月 ( 5 )   > この月の画像一覧

意外にも人気

非常に驚いたのだが、2年半も日本にいっている間に同じトピックについて研究している院生が
うちの大学だけで他に3人も増えていた。1人は政治学、1人は社会学、そしてもう1人は歴史を
専攻している。しかもそのうち2人はすでに査読論文を出版している。あと1人は今年大学院に
来たばかりだそうだ。一体、いつの間にこのお題がここまで人気を博すようになったのやら。

そのうち社会学の院生とこの前初会合してきた。正確に言うと、彼はデンマークの大学から
うちの大学に客員研究員として来ている。同じく実地調査をする分野だけあって、彼の方が一年
早いものの同じ人物とインタビューしていたり、気味の悪いほど自分の研究と似ているのである。
最初はお互いに警戒し合うような空気が少しあったが、話しているうちに、実地調査中に
同じような行き詰まりを感じたり、共通の経験や課題が見つかったのですぐに打ち解けた。
そして、やはり社会学者だけあって理論的な切れ味は抜群であった。こちらは人類学だけに
実地調査中の笑い話しか提供できず、少し悔しい思いをする。

ただ、1つ言えることは、彼が舞台で演じられる劇の演出しか見ていないとすれば、自分は
舞台裏で演出を作り出しているところを見てきたわけである。その違いを、ただ単に経験的に
内容の濃いデータを得られたとして片付けるのは簡単なのだが、それだけでは芸が無さすぎる。
問題は、舞台裏の経験からいかに理論的に新しいことを言えるかなのであって、舞台裏の経験
そのものは無価値に等しい。

さて、1つ困ったことにはやはりこのトピックに携わってると(特に英語で論文を書いてしまうと)、
メディアの人間が臭いを嗅ぎつけて来るようである。自分も日本にいた時点で、メディアの人間に
嫌な思いをさせられたことがあったが、彼の場合は現在某環境団体の船に乗船してドキュメンタリー
番組を作っている某有名テレビ局からインタビューの依頼があったそうだ。どのようなことを話しても
曲解されるだけなのを知っている彼は、もちろん依頼を断った。「メディアの人間は、名前が知れ
渡って有名になれることが、学者にとってもさぞ喜ばしいことだ、という前提で話しをしてくるのが
腹が立つ」と彼。全く同感である。
[PR]
by fumiwakamatsu | 2009-02-26 15:03 | 文化人類学

ペーター・スローダイクとブルーノ・ラトゥール

この二人の哲学家が、建築学部の開いた講演会に招かれていた。

フィールドワークで鈍りきった脳みそでは講演の10%も理解できなかったが、
SphereやNetworkという概念によって空間認識を変化させる、というような
内容であった。二人とも私的生活を保つ内の空間と市場秩序で成り立つ外の
空間という対立を解消させるために、これらの概念がどう役に立つか、という
話だったと思う。

ペーター・スローダイクはその著書の通りシニカルな笑いを混ぜたオタクっぽい
おっさんであったが、ラトゥールの話し方はヒトラーの演説に似た抑揚のつけ方で
見ているだけで楽しかった。しかも、盛り上がっている最中にボソっと呟くごとく
ジョークを入れるのが、絶妙であった。

ああ、しかし、このような偉大な哲学者が講演しても、その内容ではなく話し方
程度しか説明できないのが今の自分の知性なのかと思うと、悲しい。
[PR]
by fumiwakamatsu | 2009-02-19 15:39 | 雑記

決め台詞

以前にも日記で述べたかもしれないが、この大学の院生はメールの最後に決め台詞として好き
な引用句を挟むのが好きである。偉人の発言や好きな本からの引用など、その幅は広い。

たとえば、こんなのである。実名は削除したが、以下の引用文はある院生から先ほど届いたば
かりのメールに載っていたものだ。

---------------------------------------―-----------------------------------
The glass is a distillation of the earth's rocks, and in its composition we
see the secrets of the universe's age, and the evolution of stars.
--Richard Feynman, Lectures on Physics, Volume 1

Kent: Is this the promis'd land?
Edgar: Or image of that horror?
--King Lear, V.iii.264-5

Yale College '04
Ph.D. Candidate
Department of English (G5)
Harvard University
――------------------------------------------------------------------------

翻訳すると

――------------------------------------------------------------------------
「ガラスは地球の岩が蒸留して出来たものである。その構成物質を覗くと、宇宙の年齢と星の進
化の秘密が見えるのだ」(リチャード・ヘイマン 物理学講義 第1巻」

ケント:「これが約束の地か?」
エドガー:「もしくはその恐ろしさを映したものかもな」
リア王 第8部 264-5ページ

イェール大学2004年卒
英語学科5年 博士候補生
ハーバード大学
――------------------------------------------------------------------------

なるほど、物理学の本からシェークスピアまで読む幅広い知識を有していることを示し、さらに
はイェール大学卒という高学歴までアピールされている。文句なしである。

ただし。

この引用がつけられたメールは、同じ寮に住んでいる学生寮長の女性から届いたもので、その
内容はこんなのであった。

「3階の女子トイレの入り口側にある便器は、オブラートに包んで言うと決して目を向けれない有
様になっています。この寮に住むj全ての女性の皆さん、公共衛生の管理を徹底して頂くよう謹
んで申し上げます。後始末はしっかりして下さい。」

「う○こをしっかり流しましょう」と注意を呼びかけるメールを送るときくらいは、シェークスピアの
引用など付けないほうがいいと思うのだが。知性の顕示にもTPOがあるとも思うのだが。

ちなみに自分は、大好きな作家、カート・ヴォネガットの次の一文を入れようかと考えている。

"We are what we pretend to be, so we must be careful about what we
pretend to be."
---Kurt Vonnegut, Mother Night
[PR]
by fumiwakamatsu | 2009-02-13 13:44 | 雑記

牛丼

現在住んでいる寮は、食堂で昼・夜の食事をすることが義務付けられている。
昼はメニューが決まっているのだが、夜はビュッフェ形式で食い放題である。
時間に追われている院生にとって料理する手間が省けるのはうれしい。しかも、
値段のわりには料理の種類も多く、栄養が偏る心配がない。

しかし、食には関しては「郷に入れば郷に従え」をモットーにしていたのだが、
年をとってきたせいか、やはり順応しきれないようになってきた。今日はことさら
そう痛感させらえた一日だった。


今日の昼は「アジアンスペシャル」ということで、日本の牛丼、ヴェトナムのフォー、
中華の飲茶から1つ料理を選べることになっていた。久しぶりなので、牛丼を頼んでみる。

すると、シェフとして働いているラテン系の兄ちゃんが、米の入った丼に、焼いたズッキーニ、
ブロッコリー、生の人参のみじん切りをのせていく。そして、「エビかビーフ、どっちがいい?」
と牛丼にはあるまじき質問をしてくる。物は試しに「エビ」と答えた。そして、最後に「ソースは
グリーンカレーとテリヤキのどっちがいい?」と聞いてきたので「グリーンカレー」と答えた。
「はい、牛丼お待たせ」と言われて出されたのは、何やら黄緑の液体のかかったエビ盛り
ご飯だった。正解があるとすれば、それは器と米だけである。

ある国の料理が正しく作られているかどうか、というのは自分は気にしない性格である。
所変わっても現地の人々にとって美味しく作られているならばいいではないか、と考えて
いる。しかし、変に期待させておいて裏切るのはあまりにもひどいではないか。
心なしか、野菜入りエビカレー牛丼はことさら辛く舌に感じられた。

牛丼の吉野家はニューヨークには支店があるそうである。
あと一歩なのだから、早くボストンにも支店を出してくれないだろうか。
[PR]
by fumiwakamatsu | 2009-02-03 12:32 | 雑記

妄想特急再始動

5日前にボストンに戻ってきました。

「帰りたくない」と心の中で100回ほど唱えて帰ってきました。
日本での住み心地が快適だったから、というのもありますが、
2年半もブランクを空けていた場所に戻る居心地の悪さに
耐え切れるか、不安でもありました。浦島太郎な上に異国でも
あるわけですから。

しかし、帰ってきたら帰ってきたで意外と早く順応しております。
学部の旧友がまだ数名残っていたり、同じ研究室の後輩が面倒見て
くれたり、果てには大学時代の寮にいた友人と10年ぶりに再会したり、
日本への郷愁を感じる前に暖かい再会に迎えられております。意外にも
自分の居場所があることに自分で驚いております。

さてこのブログ。

某会社で働いていたフィールドワーク中は、関係者に読まれるのを恐れて
全く更新していませんでした。といのも、ある人類学の院生友達が、自身の書く
ブログをインフォーマントに読まれて行動をチェックされていたとの話を聞いた
ことがあったからです。というわけで、フィールドワークについては書きたいことは
山ほどあったのですが(良いことも悪いことも)、自制しておりました。

しかし、ようやく海を渡って自由になったわけですから、これからも妄想を
加速して行きたいと思います。おそらく博論を書いていく上で、噴火するかの如く
妄想・失言が湧き出てくるかと思います。今後ともお付き合いよろしくお願いします。
[PR]
by fumiwakamatsu | 2009-02-01 09:04 | 雑記