担当教官が教えているEthnographic Gaze in Japanという授業で課題が出ている。
「日本研究の礎を築いた3人の人類学者を比較して類似点・相違点を述べよ」という問いに5ページで答えなければならない。 その3人と著書とは (1)John Embree ”Suyemura” 1931年出版 熊本県の須恵村という小さな村で1926年に実地調査を行い、部落社会の経済・社会・組織について述べたもの。 (2)Ruth Benedict ”菊と刀” 1946年出版 GHQの要請を受け、日本を訪問することなく日系アメリカ人や日本に関するメディア資料に基づいて、日本人の行動・感情・価値観を統制する「文化の型」を抽出しようとした民族誌。 (3)中根千恵 ”縦社会の人間関係” 1971年出版 東北の村で同族関係を調べたのち、日本のどの組織にも通じる人間関係の原理を「縦の原理」として提示。 まず類似点は何かというと ・3人とも日本が近代化する過程には特有の文化作用(たとえそれがエートス・社会構造・経済扶助組織を意味するにしても) が影響を与えているという文化相対主義に基づいている ・自己中心主義ではなく社会中心主義として個人の主体性が表象されている ・日本人の人間関係は常に主従関係に基づいており、上部の人間の命令は絶対的 ・上に述べた特徴は例え文化相対主義を唱えたとしても西洋との単純な二項対立的比較によって描き出された日本人像であり、国家と文化を容易に結びつけ国内の多様性を否定している んで、相違点を言うと ・Embreeと中根はイギリスの構造的機能主義に基づいている。つまり人間社会の各組織はお互い相互依存の関係で均衡を保っており、ではその相互依存を規定する原理を抽出しようとする立場だ。たとえ、各組織を構成する個人が入れ替わろうとも、その果たす役割が変わらなければ社会の構造も変わらない。それに対してBenedictは「文化と人間形成」という20世紀前半アメリカで流行った立場に基づいている。各文化は個人の行動・価値観・感情を規定するように子供を育てあげるので、文化が違うと「自己」を形成する別々の「型」が生まれてくるという立場。 ・この2つのアプローチに基づくと上部構造(感情・価値観)と下部構造(社会・経済構造)の比重が異なってくる。Benedictの場合、「恩」「義務」「義理」などの基本的道徳観によって自己が社会化するため、その結果として主従関係が成立する。しかし、中根の場合は古代から培われた村社会の「縦関係」がそのまま近代の組織の中にも根付いているので、主従関係を重視する価値観は下部構造によって作られる。たとえその前提が違っても、両者とも前近代の封建的主従関係が近代以降の会社や軍隊などにみられる主従関係にそのまま再生産される、という点は同じだ (従ってマルクス主義的歴史観が主張するように下部構造が変わったところで上部構造における変容は一切起こらない)。 ・中根とEmbreeを比べたとき、前者は縦の原則を主張するけど後者は部落内における相互依存的横の関係を重視する。なぜこのような違いが生まれたかと言うのはお互い実地調査をした場所が東北・九州という違いがあるから、というのが有力な説。 まぁ、こんなもんかな。 日本語だと十分程度で書けるレポートが英語だと5時間くらいかかります。 提出は明日。さあ、これから(夜の9時)頑張ろうっと。
by fumiwakamatsu
| 2004-11-01 10:12
| 文化人類学
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