謎を問いかけるというのは素晴らしい

今日は東大であった現代人類学研究会の発表会に行って来ました。

以前にも述べたFさんのパプアニューギニアの貝貨幣の発表があり、発表内容は
論文を先に読んでいたので知っていたものの、貝貨幣の実物とフィールドの
写真を発表で見せられるということなので百聞は一見にしかず、と思い行って
参りました。

Fさんの研究はやはり面白い。論旨を自分なりにまとめると現在、Fさんが
調査を行ったパプアニューギニアの地域では、貝貨幣と法定通貨が併存する形で
使われています。普通ならば、その両者の間には一定の交換レートが存在し、
そのレートに基づいて両者を使いモノとサービスとの交換が行われるはずです。

しかし、Fさんの焦点は、その両者に別々のレートが用いられる場にあります。
どういうことかと言うとアイス一本が100円で貝貨50個という形で販売される
なら、揚げ菓子が200円だと普通は貝貨も100個というように両者の価格が
連動すると想定してしまいます。しかし、Fさんの調査では、アイス一本が100円
で貝貨なら50個なところ、揚げ菓子が200円ならば何故か貝貨300個として、
両者の相場が別々に決まりながらも交換が成り立っているという点です。つまり、
このような場では貝貨を使ってモノを買うと損してしまうはずなのに、その売買が
いとも当たり前に行われているというのです。損する点を当事者達に指摘しても、
理解する人もいれば、最初から知っていた人、または全く理解しない人もおり、
例え損を理解している人であっても、何の疑いもなく貝貨を使って損をしながら
モノを買ってしまう、という状態だそうです。発表は、もっと具体的に貝貨幣しか
使われない交換領域、法定通貨しか使われない交換領域、また一定レートで
両者による交換領域を説明された上で、以上のような我々の常識からすると
不可解と思ってしまう領域について説明されてました。

Fさんはジジェクを引用した上で、彼らは(損をしているという)真実を知らないから
このような売買を行っているわけではなく、不合理と承知した上で同じ行為を続ける
という「物神崇拝的な転倒」が起っている点を指摘されていました。正にその通り。
さらに面白かったのは、コメントを送られた方が「日本でもパチンコで同じ現象が
起っている」と指摘されたことでした。パチンコでは買うときの交換レートと、ゲームを
終えた後でパチンコ玉を換金するときのレートには絶対不利になるよう仕組まれている
のに、もし煙草などの商品のままでパチンコ玉を交換すると同じレートで済むものの、
必ず現金に換金してしまうということです。たしかに、もっと注視すると周りに同じような
現象はあり溢れているのかもしれません。

今回の発表で学んだのは、いかに聞き手にも同じように謎を考えさせるように話をするか
という点です。アメリカでの発表は例え拙くても自らの主張をするように教えられますが、
このように「何故損を承知した上での物神崇拝が起るのか?」と誰もがその答えを探って
しまうような形で問題提起する方が、聞き手にも、またコメントをもらう発表者側にも有益だ
と思うのです。その上にFさんの話方が落語的に落ちを入れて話されていたのも素晴らしかったです。
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by fumiwakamatsu | 2006-12-10 01:18 | 文化人類学
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