ここまでネイティブか?

先日、「Doing Fieldwork in Japan」という指導教官が編纂した、日本でフィールドワークをし
たアメリカの社会科学者の体験談をまとめた本を読んでました。とりわけ、自分の研究にも
関わる公的機関・官僚組織の中で働きながら調査した学者のものを集中的に読んでおりまし
た。どの学者も一様に、調査を開始するためのコネ作りと時間の浪費に苦心されていたのが
共通しており、読みながら自分も慰められました(いや、むしろ自分を慰めるために読んでいた
というほうが正しいです)。

さて、その中で日本とアメリカの検事のオフィスで働きながら比較調査をしていた法社会学者
のエッセーがありました。読んでいるうちに、「はて、似たような話をどこかで聞いたことあるよう
な?」という疑問が湧いて来ました。そして思い出したのが、数年前に、弁護士をしている父親
と居酒屋で飲んでいたときに聞いた話でした。

「アメリカの学者には、わざわざ検事のオフィスで働いて調査する人もいるんだから、あの現場
主義はすごいよな。日本の法学者は机上の空論ばかりして何も現実を反映しとらん。お前も
学者になるのだったらああいう学者になりなさい、」と言っておったのです。

そこで、早速、父親に電話して名前を確認してみると、やはり同じ学者でした。検事の取り調
べ方法を批判した本を何冊か書いている父親は「ああ、あの人ならわしのところにもインタ
ビューしに来たぞ。彼の本はもう日本語版で出ていて、わしのインタビューの内容も載ってた
わ。気さくで面白い人だったぞ。お前もああいう学者になりなさい」と電話で話しておりました。
たしかに、体験談の中では追加調査で弁護士ともインタビューをしたと書かれてました。

自分の父親をインタビューしたアメリカ人の学者の体験談を参考にして日本で調査をしようと
する息子。厳密には父親とのインタビューは付属的なものですが、それでも複雑な心境になり
ました。昨今、自分の生まれ育った国で調査を行う「ネイティブな人類学者」の視座というもの
が議論されております。しかし、ここまで「ネイティブ」という関係が錯綜している例も珍しいものです。
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by fumiwakamatsu | 2006-11-26 07:40 | 文化人類学
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