レゲエ好きにお勧め

この夏、数年ぶりに恵比寿の報道写真展へと行ってきました。紛争、難民、天才、飢餓など確
かに一枚一枚の写真はインパクトのあるものですが、テーマがありきたりでさほど面白くはな
かったです。

しかし、その中で1つだけ興味がそそられるものがありました。それは4つの写真を組み合わ
せたものなのですが、一枚目にシエラレオーネのダイヤモンド鉱山にて泥の中で働く黒人の
子供達の写真があり、最後の4枚目にイギリスの社交界で、ダイヤモンドを鏤めた白人の貴婦
人達の姿が写っていました。そして、パーティールームの円卓には黒人女性が裸で横たわり、
その上にもダイヤモンドが鏤められ、あたかも芸術作品かのように飾られてたわけです。

「こういう白人のおばはん達に限ってChild Laborに反対する運動とかしてるんやろうね」と、一
緒に来ていた友人に言うと、「たしかに、こういう写真を見せられるとダイヤモンドを買えなくな
るわね」と言っていました。

ではダイヤモンドという高価な商品だけが問題なのでしょうか?もっと身近にある安い商品の
場合はどうなのでしょうか?

1000円で3枚入りのヘインズのTシャツを買うには、誰かが1週間3000円程度の給料で働い
てそれを生産しなければなりません。しかも、ヘインズの工場は「特別自由地区」と言って、発
展途上国の領内にある治外法権の特別区に作られ、輸出する際に関税がかからないシステ
ムになっています。特別自由地区の横には、大抵、軍か警察の施設が敷設されており、もしス
トライキが起った際には一瞬に鎮圧できるようになってます。それでもなお労働者が拒否すれ
ば、全員解雇し、別の国から住み込みで働ける従順な労働者を入れればよいだけなので
す。

こんな話が実際にあるんだろうか?と、疑問に思われた方は、「ジャマイカ楽園の真実(http://
www.uplink.co.jp/jamaica/)というドキュメンタリー映画を見てみて下さい。2年前にある大
学院で取っていた授業の中で見た映画なのですが、どれだけシステマティックに貧困が作ら
れているかよくわかる映画です。

北米や日本からの観光客は、美しい砂浜のリゾート地へと行けるわけですが、それは空港から
出るリムジンバスである一本道を通って行きます。沿道には外資系企業が建てた飲食店が立
ち並び、同じく外資系資本で建てられたリゾート地で「楽園」を味わえるわけです。その沿道の
果てに広がるスラムは見ずに済むようになってます。

ジャマイカが45億ドルもの負債を国際金融機関に負い、貧困から逃れられないのは何故か?
それは、融資の目的を全て農業に使うという制約がかけられ、教育や道路などの公共事業に
あてがうこともできず、農地だけを開拓するよう強いられたからです。結局、自国で作る食物
は、大量生産で安く作られたアメリカから輸入される食物に対抗することもできず、農民達は職
にあぶれ、都市へと移転し、スラムを形成していきます。そして、上で述べた工場で酷使され
る羽目になります。初代ジャマイカ大統領のインタビューが映画に挟まれているのですが、ジャ
マイカが独立した1962年に世界銀行と契約を交わしてしまったことを「最大の失敗」と悔やん
でおります。

この映画を見ていてもう1つ面白かったのが、人種のヒエラルキーが露骨に出ている点です。
まず官僚や上の大統領などは白人で占められ、次にバナナ農園の所有者などは(おそらく植
民地時代にインドから連れてこられた)インド人が多いです。そして、スラムや農場で働く者は
黒人ばかりです。国外だけではなく国内でもヒエラルキーが再生産されているのが興味深い
です。おそらく他のトリニダッドなどのカリブ国でも一緒なのでしょう。

たしかに暗い基調のドキュメンタリーですが、所々に挟まれるジギー・マーリーの歌がそれを緩
和してくれています(彼は子供達の中でもお父さんのボブと一番声質が似ていると思いま
す)。この映画を作った監督はさぞかしマルクス主義の洗礼を受けた活動家と思ってたのです
けれども、大学時代は環境科学を専攻していたという女性の方だそうです。ジャマイカに3年
住んでいた経験がこの映画に結びついたとか。何はともあれ、とても勉強になる映画です。
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by fumiwakamatsu | 2006-11-11 23:02 | 文化人類学
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