救われた

「フミ、お前はどういう人類学者として将来やっていきたいんだ?教えるとしたらどんなことを
どこで教えたいんだ?」 大学院3年目にしてかくもストレートな質問を今日指導教官にされま
した。来日中の彼に時間を割いてもらい、現在のフィールドワークの悩みを打ち明け、何を
どうやって表象したらよいのかわからない、と話していたときにこの質問が出ました。一瞬、
どう答えてよいのやらわからなかったですが、自分の特化したい分野とその将来性を述べ、
また、例えマーケットは小さくても何とかアメリカで教壇に就きたい意志を伝えました。すると、

「それならば、今のトピックに何としてもしがみつきなさい。フィールドワークを始めて最初の
1ヶ月は誰でも苦悶するものさ。僕なんかどこでフィールドワークするかも決まってなかった
のだから」と述べられました。その後、彼も最初はどういうアプローチをしてよいかわからずに
引きこもっていたこと、インフォーマントと接触するのを怖がっていたことを話してくれました。

彼の著書の中では「成功例」しか出て来ないのに、素直に裏話を打ち明けてくれて、とても
救われた気分になりました。そして、基本的には「もっと足を動かせ」というアドバイスと、
「遅くとも論文計画表は12月までに発表しろ」との命令を受けました。これまで日本にいた
時間を無駄にし過ぎて恥じる思いと新たな闘志が入り交じった複雑な心境に陥りました。

正直なところ、うちの指導教官はそれほど面倒見のいい人ではありません。自由放任主義
です。というのも、学科長としての雑務に追われ、学術雑誌の論文審査員も兼ね、生徒数の
多い授業を持ち、その上、本を書きながら次のリサーチまでしているという多忙さの故で
あります。それが理解できてなかった一時期は自分が指導教官に嫌われていると思い込んで
いたこともありました。一度、同じ指導教官の元で学ぶ先輩にその話をしてみたところ、
「フミ、それは間違ってるわ。彼は最も大切なもの、つまり、自由を与えてくれてるのよ」
と諭されました。たしかにうちの学部の教授の中には「こういうトピックをしたければ私の所に
来なさい」と予め生徒のトピックを決めてしまう方や、関心のあるトピックでなければ愛想
をつかすような方もおられます。しかし、指導教官に関してはそのでかい体格と同じで
常に大らかな態度で生徒の考えに耳を傾けてくれます。そして、理論的な部分は生徒に
考えさせた上で、フィールドワークに関することなら非常に具体的なアドバイスをしてくれます。

将来のルールモデルとして身近に指導教官のような方がいるのが恵まれているように
思えます。あの体格だけは真似したくないですが、その他の部分は全てを真似したいです。
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by fumiwakamatsu | 2006-11-10 23:29 | 文化人類学
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