最大型雄性生殖器

村上春樹の「羊をめぐる冒険」の冒頭。

主人公が神戸のある水族館に行ったときの思い出を語る。
そこには2mほどの鯨のペニスの等身大像が置かれていた。
一体どういういきさつでそのペニスが標本となり飾られるようになったのか。
沈黙した像の前で思いを馳せる主人公は寂寥感に駆られてしまう。

村上春樹は神戸の水族館と書いているけど、本物の像は別の場所にある。
おそらく神戸の水族館とは須磨水族館のことだろう。
そこには何度も行ったことはあるけど鯨のペニス像なんて見たことない。

でも、別の場所には確かにある。
和歌山県、紀伊半島の先にある太地という捕鯨の町だ。

家族旅行で太地の鯨博物観に行ったのは4歳だったと思う。

館内を歩いていると、親父が「おい、文貴、こっちに来てみろ」と大声で叫んだ。
行ってみると、そこには巨大なピストルの弾のような像があった。

「これなんだかわかるか?」
「なんなん、これ?」
「ふふふ、これは鯨のチンチンだ」
「えー!!ほんま?なんでこんなおっきいの?」
「そりゃあ、鯨が人間より大きいぶん、チンチンも大きくなるんだ。」

何も知らない純粋な息子に向かって説明する親父はものすごく嬉しい顔をしていた。
そして、「はい、早く横に立って」と急かして写真を一枚撮った。

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4歳のくせに、なんと虚無に浸った顔をしているんだろう。
村上春樹の描写はたしかに正しい。
この大きさ、そして肉迫してくる沈黙の前では子供でさえ虚しさを覚えてしまうのだ。

オトコとは何ぞや、イノチとは何ぞや、ウチュウとは何ぞや、、、、、

決してこんなボキャブラリーはなかったはずだが、漠然と疑問に思っていたに違いない。
そして、その疑問は無意識の中に密封されていたのだろうか。
20年後の今、アメリカの大学院にまできて捕鯨を研究することになった。
たまげたもんだ。

次の夏には太地を訪れる予定でいる。
この像と再会したときはどんな気持ちになるんだろう。

(上の写真は、母親に頼んで送ってもらった。)
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by fumiwakamatsu | 2004-09-15 12:15 | 雑記
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