The Plague of Fantasies (2)

「伝統的ドイツの便器は大便の流れる穴が驚くほど前にある。従って、大便が目の前に
置かれ、匂いを嗅ぎ、何か病気がないか照査するはめになる。その反面、典型的なフランス
の便器は穴が後の方にあり、なるべく早く大便が消えるようになっている。またアングロサクソン
(イギリスまたはアメリカ)の便器は、両極端にある2国のものを丁度統合した作りになっている。
便器には水が満たされているので、大便は浮きどうしても視界にはいる。しかし、ドイツ式のように
照査する必要はない。「Fear of Flying」という本の中で、Erica Jongはこのようにヨーロッパの
便器の違いについて述べているのだが、彼女は幾分嘲笑を含んで次のような主張をしている。
『ドイツ式便器は第3帝国(注:ヒトラー政権のドイツ)の脅威を示す中心的役割を果たした。たしかにこんな
便器を作りだせる民族なら不可能なことはない。』なるほど、彼女の主張はもっともである。
これら異なる便器が純粋に実用性を考慮して作られてないのは明らかだ。つまり、いかに
身体から出る不快な排泄物に主体を関わらせるか、という(国家の)イデオロギーがはっきりと読み取れる。

ヘーゲルは、ドイツーフランスーイギリス3国の存在論的差異について解釈を示した最初の1人である。
ドイツは徹底した考察主義、フランスは革命的な性急主義、イギリスは上品で実用的なプラグマティズム。

(中略)

これら排泄物に対する3国の取り組み方の違いを比べることで、その根底にある(国家イデオロギーの)
仕組みを一般化することができる。ドイツ式は理由もなく考察する魅惑に駆り立てるようにできており、
フランス式は不快な排泄物をなるべく早く取り除くよう急き立てる仕組みになっている。そして、
アングロサクソン式だと、排泄物を普通のもののように扱い最も適した方法で流す、というプラグマティック
な仕組みになっている。学者達は「我々はすでにイデオロギーから解放された時代にいる」などと、
いとも当たり前のように主張している。そんなことを円卓を囲んで熱く議論をしたとしても、トイレに行った時点で
すぐに気付くだろう。まだまだイデオロギーにどっぷり浸かっている、と。」

Zizek 「The Plague of Fantasies」 p5より

図書館で笑いを堪えるのが大変だった。
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by fumiwakamatsu | 2005-04-17 13:24 | 文化人類学
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