ホステスさん

大学2年のとき、2ヶ月だけ銀座のクラブでバイトをした。
巨人の清原が入団したての高橋を連れて遊んでいたところで
フォーカスの記事にされたこともある並木通りのTというクラブ。
銀座でも五本の指に入る売れ行き。40卓以上ある店内は
いつも満員になるほど賑わっていた。そこで働くホステスさんも
下手な女優よりかは遥かに綺麗は人が何人もいた。
まさに浮世の極楽という言葉が当てはまるような場所だ。

その極楽の最下層で奴隷ウェイターとして働かされていた。
灰皿に2本吸殻があれば取替え、水割り用ペットボトルも半分になると
取替えなければいけない。客から注文されたものはどんなものでも取り寄せねば
ならず、「たこ焼き食いてえなぁ」とぼやかれれば全速力で3丁先にあるたこ焼き屋
まで買いに行かなければいけなかった。一番酷だったのがホステスさん用の生理用品
を買出しに行かされたこと。特大サイズを近所のマツキヨまで買いに行くと、
レジの前の長蛇の列で待たされ、周りにいるOLさん達に白い目で見られていた。
「俺が使うんじゃないんですからね!」と必死で顔で訴えるしかなかった、、、。

さて、40人ほどいるホステスさんはとても見事に分業していた。
頂点に立つのはやはり着物美人のママさんなんだが、全員が美人なわけでもなく、
切れのいいトークを売りにする人もいれば、母性の優しさに溢れる人もおり、
自慢のボディーが取り得の人もいれば、恥かしがりやで内気な性格を売りにしている人もいた。
それぞれの個性で顧客を掴み取り、他のホステスさんと役割が被らないようになっていた。
というのも、客がボトルをキープするときはお気に入りのホステスさんの名前を付けてキープし、
金額の半分が店に入り、残りがホステスさんの出来高になるというシステムだったのだ。
ちなみに一番高いワイン(銘柄は忘れた)は一本60万円。ドンペリは30万円だった。

Tの一番の売れっ子は20代後半のIさんだった。美人なわけでもないのだが、
とにかく身なりが派手で気の強い性格をしていた。同じ京都出身で、京訛の柔らかい言葉とは
裏腹に、勝気な態度を取るギャップがおっさん達の心をくすぐっていたのだと思う。どの客でも
下手に出させ、「構って頂戴よ、ねぇ」と必死にさせるコツを掴んでいたようだ。
もちろん同郷者の自分にも容赦はなく、注文を取りに行くときは何かしら文句を付けて
「このアホ!」と叱られていた。最初はむかついていたが、だんだんM的な快感になっていき、
おっさん達の気持ちもわからんでもないな、と納得していた。彼女の稼ぎは月600万くらいだったかな。

いつも地下のゴミ捨て場で着替えて帰るのだが、ある日、事件が起こった。
ゴミ捨て場のドアを開けるとママさんが数人のごつい男達に囲まれていて、
自分の姿を見るや否や「早く店長呼んで来て!!」と叫んできた。慌てて店内に戻り、
店長に事情を説明していると、着物が肌蹴たままでママが店内に走ってき、店長の
胸に飛び込んで泣きじゃくっていた。後日、話を聞いたところによると、どうやらママは
ある客と付き合い出して、それを妬んだヤクザの客がヤキを入れようとしたそうだ。
美人なだけに男に惚れることも許されない世界なんだと思うと、その厳しさに切なくなった。
ママは数週間店を休んだものの、戻ってきた日にはいつもと変わらず接客していた。

週2で働いていたんだが、2ヶ月経って店長に「毎日働きに来い」と命令され、断ると首にされた。
当時欲しかったノートパソコンを買える金も十分に溜まっていたので(時給は1500円)
むしろ首にされて嬉しかった。何はともあれ、普段の生活では決して見れないような美人と
出会えたし、豪勢な浮世の果敢無さを垣間見れただけでもいい勉強になった。
唯一の悪影響は、店の客に「これは悪い社会勉強だぞ」と勧められて初めてタバコを吸い、
その後止められなくなってしまったくらいだ。最後のはなむけに、「いつか自分の金でうちに遊びに
来れるくらい大きな大人になれよ」と店長からの優しい一言を頂いたが、金持ちになっても絶対
こんなとこ来るもんか、と堅く胸に誓った。まあ、そんな金持ちになれる可能性は更々無いのだが。
[PR]
by fumiwakamatsu | 2005-03-31 16:15 | 雑記
<< Arna's Chil... いたって平凡 >>