Home Plus

大学2年までは長期休暇に入ると必ず貧乏旅行に出かけていた。
行き先を挙げるとヴェトナム、タイ、台湾、ネパール、インドネシア等等。
しかし、途中から旅行が楽しくなくなってきた。と、言うのも一体海外に行くからと言って
新しい経験ができているのか、それともすでに知っていることを再確認しに行ってるのか
わからなくなったからだ。それ以降は家族や彼女と一緒に海外旅行することはあっても、
1人でバックパッカーを背負いながら苦行僧的な旅行をすることは止めてしまった。

Therouxという人類学者が言うには「旅行とはHome Plusな経験をするだけにすぎない」そうだ。
海外旅行に出かけても大抵は自宅とほとんど同じ機能を備えたホテルに泊まり、後は地球の歩き方
などの旅行ガイドに従って消費活動することしかできない。それもそのはずで、海外に行ったところで
土地勘もなければ現地の言葉もわからないし、自国ですでに設定されたガイド的なものに従うしかない。
したがってスペインなら「Home+太陽」、アフリカなら「Home+象とライオン」、エジプトなら「Home+ピラミッド」
という程度の体験しかできないもんだ。異国情緒を味わうというよりかは、すでに自国で知り尽くしたものを
「ああ、やっぱり思っていたとおりだ」と再確認する快感を味わう、というほうが正しいんじゃないだろうか?
そして、異国にいたという事実を写真などで記録に収めることで、自国に戻るとあるステータスが得られてまた快感だ。
もし、現地の人々と同じ生きた体験を味わおうとしても、自分の無力さに気付いてしまうだけだろう。
英語が通じる相手なんて9割は「旅行者から金を取ろう」と考えている人か、たまたま学識のある人でしかない。
こう考えると自国からより遠くに行けば行くほど自国で作られた既成の認識を上乗せしているだけになる。
そのために大金はたくなら馬鹿げた話だ、という結論で1人で海外旅行に行くことはさっぱりなくなった。

とは、言うもののやはり海外でしか味わえない「純粋な感覚」というのもあるかもしれない。
匂い、視覚、味覚など、五感で感じるものが自国になければ海外に行くしかない、とも思う。
こう考えて、是非やってみたいのが「世界お酒の旅」だ。ドイツの地ビール、アイルランドの
黒ビール、スコットランドのスコッチ、アフリカではバナナで作ったお酒もあるそうだ。
でもこれも伊勢丹の地下一階で事が済んでしまうかもしれない。うーん、難しい。
[PR]
by fumiwakamatsu | 2005-03-16 15:42 | 文化人類学
<< 今後の道程 ラカン >>