赤札

今年もとうとう来てしまった。
赤い便箋に入れられて。
ああ、心の底から行きたくないのに、、、
しかし断れるほど世の中は甘くない。

届けられたのはライシャワー日本研究所からのカクテルパーティー招待状だ。
毎年9月に、日本から来た客員研究員と日本研究をしているハーバードの教授を引き合わせるためにパーティーが開かれる。
それもキャンパス内で最も豪華なシャンデリア煌くダンスホールで。
ちなみに一昨年は小泉首相が来たそうだ。

去年のパーティーでは本当に恥をかいた。

前日、どんな服装を着ていけばわからなかったので先輩のKに聞いてみたら、
「セミフォーマルで十分よ」と言われた。ならYシャツ、チノパンで大丈夫か、
とタカをくくって行ってみると、、、、

舐めてました。

皆さんスーツできめていて、中には燕尾服を着てる人もいた。
「馬鹿ねぇ、セミフォーマルっていうのはジャケットを着なくてもいいって意味よ」と言うKは、
普段は化粧もせずにジーンズばっか履いてるのに、黒のワンピースを着てゴージャスだった。
汚れたNIKEのスニーカーなんて履いていたのは自分だけだった、、、。

一通り教授の紹介や挨拶が終わると歓談に。
誰もがカクテル片手に微笑みを浮かべながら話をしていて、映画そのままだった。

独りになるのが嫌なのでKの後を金魚の糞のようについて歩いていた。
面倒見のいいKは、「誰か話したい教授がいたら私が紹介してあげるからね」と言ってくれた。
そう、何を隠そうここはハーバード。学界でのスター達が集まる場所だ。
日本にいたときに読んだ本の著者がすぐ目の前にいるのだ。
ヨン様、ベッカム様を見たら、日本人の女性が黄色い悲鳴を上げてしまうように、
「おおー、あれがアンドリュー・ゴードン(歴史学者)かぁ!
あ、あっちにはエズラ・ボーゲル(社会学者、"Japan as No.1"の著者)が!
オフォー、すげぇ!サイン欲しいー!」
と、禿げたおっさん達を見て興奮しきっていた。

すると、Kがわざわざ本人達のもとへ連れて行って紹介してくれた。
嬉しいのだけれども、もう緊張しすぎて頭が真っ白になり、
「ワタシハワカマツフミタカデス。ジンルイガッカ二イテ、ホームレスモンダイヲケンキュウシテオリマス、」
と、言うので精一杯だった。後は会話が続かず苦笑いを浮かべたまま凍っていた。
幸いにもKが美人なので、おじさん教授達は喜んでKに会話の矛先を向けてくれた。
そして、全く存在が忘れられたように、自分は横でポツンと立っていた。

こんな苦痛な時間が2時間あまり経過したあと、ようやく担当教官と合流した。
この人だけは、どこにいようと必ず寿司のロゴのついたネクタイでやってくる。
いつも活発な彼の奥さんと話をしているうちに、ようやくパーティーは終わった、、、。

残念ながら、Kはもうボストンにいない。
中高年男性の性意識について調査するために、彼女は日本でおじさん相手にインタビューを行っている (天職だ!)。
今年は1人であのパーティーに行かなければならない。
いや、むしろKのように後輩の子を連れて教授達に紹介せねばならない。
はぁーーー、、、。

別に勉強なんていくらでもできるさ。授業中の議論だっていくらでも参入できるさ。
論文を発表したり、質疑応答に答えるくらいお茶のものさ。
そんなことに英語はネックにならない。だって論理的ならそれで済むもの。

でも、あの作り笑いとウィットを利かせた会話だけは勘弁して欲しい。
あぁ、気が重い、、、、、。誰か代わりに行けるなら行って欲しい。
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by fumiwakamatsu | 2004-09-09 09:43 | 雑記
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