「爪割ろうか?」

Mさんは素敵な女性だ。
アメリカまで来てこんな素敵な日本人女性と出会えるとは思わなかった。
Mさんとは他大学にいっている友人Rを通して知り合った。
まったく、偶然に感謝したい。

Mさんの腕回りは俺の脛くらい太い。
Mさんの太ももは俺の腰くらい太い。
腕立て、腹筋、スクワットを毎日100回ずつして鍛えていたそうだ。
そんなMさんの口癖は、「爪割ろうか?」

何を隠そう、Mさんはあの井上康生の先輩だ。
3歳で柔道を始め、高校のときは78キロ級で全国制覇。
そして天下の東海大柔道部に入り、女子団体で全国制覇。
オリンピック手前で頚椎を痛め、断念したそうだ。

そんな彼女は第2の人生を歩もうとしている。
カナダで1年間働いた後、スポーツ経営学を学ぶために渡米。
そして、この9月からNew Havenにある大学院に通う。
数週間前からボストンに来て、今は幼少時代の柔道仲間だったRの家に泊まり準備をしている。

昨日、Rの家に遊びに行ったらMさんがアルバムを見せてくれた。
なんと井上康生が普通に練習している写真があった。
「そして、この人が百貫先輩よ」と言って指差したのは余裕で100㌔は超えている男だった。
「百貫先輩はちっちゃい頃、肥満症で死にかけたんだって。今はすばしっこいデブだけどね」
と説明してくれた。その人も在学中には100㌔級で全国制覇したそうだ。

Mさんといると新しい単語を学べて楽しい。
例えば、

タキる、、、(動詞)滝のように汗をかくこと。息切れし、暑苦しいさま。<例>「百貫先輩、今日もタキッてますね!」
てめえ、何段だ、、、(慣用句)序列を理解しない愚か者に対して使う脅し文句。整列時、食事中に間違って上座に座った者がいるときに使う。
煮る、、、(動詞)ボコる。リンチする。「てめえ、何段だ」の後に続く動作。

などなど。

Mさんは大学卒業後、柔道を止めていた。
しかし、Rに誘われて我が家の近所にある柔道場に通い出した。
なんとその道場には70㌔級でアメリカ国内2位の男がいるそうだ。
練習初日、Mさんの腕前を聞きつけたその男は乱取りを申し込んできた。
しかし、Mさん曰く、その男は柔道着を洗っていなくて臭くてたまらなかったらしい。
だから、「もう、組んだ瞬間、速攻で投げまくったの。ボコボコにしてやったわ」だそうだ。
「あんな男、東海大の部員100人中99位よ」とまでいうMさんはかっこよかった。
それから数週間、その男は練習を休んだらしい。

そんなMさんは明日ようやくNewHavenに引越しする。
急にもかかわらず、引越しの手伝いを頼まれてしまった。

「Fumi君、か弱き乙女を助けるためにも引越し手伝ってよ。」
「何言ってるんすか、Mさんなら熊だって殺せそうじゃないですか。」
「あ、そう。じゃあFumi君は爪割られたいんだね。」
「嘘です。喜んで手伝わせてもらいます。」
と半ば脅しだった。

Mさんは引っ越しても同じ道場に通い続けるそうだ。
だからしきりに俺にも柔道をやらないかと誘ってくる。
なんとか、勘弁して下さい、と断り続けている。

だって誘い方が、
「Fumi君も柔道やりなよ、爪割ったげるからさ。」
なんだもん。
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by fumiwakamatsu | 2004-09-06 05:20 | 雑記
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