Japan as No.1 だったかも?

b0017036_1442739.gif「日本は世界一だ!アメリカは日本に見習うべきだ!」
なんて、もしハーバードの教授が言えば日本人はそりゃ喜ぶよな。
日本が高度経済成長を成し遂げ、敗戦コンプレックスから脱却し始めたとき、
「Japan as No.1: Lessons for America」という本が出版された。
1979年、ハーバード社会学部のエズラ・ボーゲル教授が執筆したその本は日本で大売れした。
ボーゲル教授は3年前に退官されたが、名誉教授となった今でも活発に研究を続けておられる。

今日は彼の講演に行って来た。
タイトルは「Japan as No1を売り歩いた男の追憶」。
日本語版が出版されたときの裏話でとても面白かった。
宣伝のために日本に訪れたとき、各新聞社のインタビューを受けていると、
その中に池田大作がいてなぜか創価学会の聖教新聞にも載せられてしまったそうだ。

そして、本が売れ始めると大企業の社長から食事の誘いが絶えなかったらしい。
その中の1人が松下幸之助。すでに末期ガンだったので入院先の病院にて面会したのだが、
「うちの会社を見習ってアメリカを建て直したいとは、なんて愛国主義な人間なんだ」と諭されたそうだ。

この本は日米だけでなく、アジアの他の急進新興国でも売れるようになった。
そのせいで韓国の官僚に「Korea as No.2という本を書いてくれ」と頼まれたそうだ。
シンガポールではリー・クワンユー首相に食事に呼ばれ、日本のシステムを輸入する方法について講義させらた。

ただ、ボーゲル教授曰く、「誰もがJapan as No.1をJapan is No.1と勘違いしていたのが悲しかった」そうだ。
産官提携の強さ、商品の質の高さ、公共教育の水準の高さ、治安の良さ、など個別に見ると世界に類を見ない秀でた点があるが、
国力がNo.1だと勘違いして、政界や財界のエリートが日本を誇示する道具としてその本を使っていた点を嘆いていた。
そして、90年以降の不況で日本が失墜してからは「嘘つき」呼ばわれされたそうだ。
学者からは昨日書いた「日本人論」の1つとしてこの本がやり玉に上げられることも多い。

講演の後半は中国・日本を比較して「Chaina as No.1」になる日が来る可能性について言及していた。
労働欲の高さや学識の高さ、また多国籍企業の受け入れ方などは日本を上回っているかもしれないが、
まだまだ政治形態の不透明さや情報産業の遅れという不安材料があるのでその日は来ないと語っておられた。
そして、頼まれても「~AS No.1」というタイトルではもう本を書かないそうだ。ちょっと笑えた。

柔和なボーゲル教授を慕って日本の政治家が今でも訪れてくるそうだ(菅直人とかね)。
個人的に最も驚いたのは、彼がハーバードの院生だったころ、タルコット・パーソンズに学んで先輩にクリフォード・ギアツがいたことだ。
当時は社会学・文化人類学・心理学が統合してSocial Relationsという1つの学部だった。
今では敵対し合う分野が統合されていたからこそ、柔軟で優秀な学者が生まれたのかも、と思った。
後輩としてはとても荷が重い、、、。

「カッテナコトバカリイッテスイマセンデシタネ」
と日本語で閉めて、ボーゲル教授は講演会を終えた。
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by fumiwakamatsu | 2004-12-17 14:31 | 文化人類学
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